【世界情勢について考える】

「孤独なカタール / カタール断交の背景にある理由とカタール人の苦悩」

ISB  Grade10 武者 祐衣

サウジアラビア、エジプト、バーレーン、そして、アラブ首長国連邦(UAE)は6月5日、カタールとの国交を断絶すると発表した。引き金となったとされるのはカタールのトップであるタミム首相の演説だ。タミム首相は演説の中で、イランとの関係改善を呼びかけるとともに、ムスリム同胞団を擁護したのだ。

小国でありながら、裕福で、国際的に存在感を示してきたカタールを資金面から下支えしてきたのは、ペルシャ湾のガス開発であるが、このガス田はイラン側とつながっているため、開発を円滑に進めるには、イランとの対立を避けなければならないという事情がカタールにはあるのだ。また、ムスリム同胞団は多くの国から非難されているが、貧困家庭などへの支援や社会奉仕活動に取り組むという一面もあるため擁護すると主張したのだとみられる。

しかし、カタールとの国交を断絶することを発表した国々は、イランと対立し、また、原理主義であるムスリム同胞団を危害を加える団体としてとらえているため、このタミム首相の演説の中で言われた内容に危機感を感じたのだとされる。特にサウジアラビアは、内戦が続くシリアやイエメンをめぐってイランと鋭く対立し、去年1月には断交に踏み切った事情がありであり、また、エジプトは、首相を2人も暗殺してきたムスリム同胞団をテロ組織に認定し、警戒している。ムスリム同胞団とは、宗教活動に、政治活動、社会福祉活動を取り入れたイスラム教スンニ派のISに似た団体であり、エジプトに根を張っている。

このような理由がカタールとの国交を断絶させたが、実際に住んでいる人同士には異なる事情があり、カタール断絶を良いこととしては捉えられないことが多々ある。まず、国交を断絶したために、各国はカタール航空の乗り入れを禁止し、カタールと唯一陸路で接するサウジアラビアは国境を封鎖した。さらに、湾岸諸国は自国内のカタール人に対し14日以内の出国を命じると同時に、カタールにいる自国民に帰国を要請した。一見それほど難しそうではない事情に見えるが、家族がいる人にとっては、なんとも難しい決断だ。これまで湾岸諸国のうち6カ国間では、どこにでも居住、勤務、渡航する自由が認められていたために国籍の違う人同時での結婚が多かったのだ。カタール断交によって、家族がバラバラになってしまう恐れがあり、また、とどまることを決意すると、「無国籍」状態になる恐れもある。このように、カタール断交は国としての安全は保つかもしれないが、非人道的なことが起こる可能性もある。

確かに、サウジアラビアやエジプト、バーレーン、アラブ首長国連邦がカタールのタミム首相が言ったことに不安を抱くのは分かる。イランとの関係の他にも、カタールは湾岸諸国の文化を変えるような動き、例えば、女性が自由に運転できることなども見せてきた。しかし、本当に国交を断絶をしなくてはならないのかと疑問にも思う。カタールの首相は、演説の中で言ったことのないことが流れていると主張しているが、サウジアラビアやエジプトなどの国は聞く耳を持たない。国交を断絶することを決めた理由と言われたこと以外にもっと具体的な理由があるのではないかと思う。カタールがイランとの経済的関係を深めることによって、ともに豊富な資金を得ていたことに、イランと断交してしまったサウジアラビアが苛立っていたのは明らかだ。今年の5月にあった中東訪問で、トランプ氏がカタールとの断交へサウジアラビアの背中を押していたのかもしれない。けれども、カタールは他の湾岸諸国に危害を与えるようなことはしていない。そのため、国交を断絶することにより損をすることの方がサウジアラビアなどの国にはあるかもしれない。仲介役に入っているクウェートが言っていることは確かで、ISと戦うために中東が団結しなければならないときにカタール断交は不適切な動きだと思う。米国が主導するISへの空爆へもカタールの米軍基地内に司令センターが置かれているのだ。また、中東湾岸諸国に国籍を持つ人たちにとっても、あまりにも酷い決断が必要とされている。家族と別れなくてはいけないというのはいくら国同士の仲が悪くなったからと言って、するべきことではないと思う。カタールにとってはこういったこと以外にも心配しなければならないことがある。それは、食料品や生活必需品などの輸入だ。今まで、近くの湾岸諸国から輸入していたのが国交の断絶により、それが不可能となったのだ。いくら一人当たりのGDPが非常に高い国であっても代わりの調達先を見つけるのは困難だ。何しろ、陸続きの国はサウジアラビアしかないのだ。空路や海路だと費用がかかりすぎる。トルコ大統領が言うように、国を孤立させることは非人道的であり、また、イスラムの価値観にも反する。このようにカタール断交は国民にまで困難をもたらしている。トルコやクウェートなどの仲介役がどうにか湾岸諸国を和解してくれることが、一番理想的であると思う。

講評

中東の複雑な国際情勢を背景にしたカタール断交のニュースについて、
カタールと周辺諸国双方の事情を考慮した上で、解決策の提案ができています。
解説も分かりやすく、深く理解できていることが分かります。
解決の糸口が見えにくい問題ですが、このように解決を目指して考えていきたいですね。(東樹)

【世界情勢について考える】

孤独なカタール / カタール断交の背景にある理由とカタール人の苦悩

ISB  Grade10 武者祐衣

サウジアラビア、エジプト、バーレーン、そして、アラブ首長国連邦(UAE)は6月5日、カタールとの国交を断絶すると発表した。引き金となったとされるのはカタールのトップであるタミム首相の演説だ。タミム首相は演説の中で、イランとの関係改善を呼びかけるとともに、ムスリム同胞団を擁護したのだ。

小国でありながら、裕福で、国際的に存在感を示してきたカタールを資金面から下支えしてきたのは、ペルシャ湾のガス開発であるが、このガス田はイラン側とつながっているため、開発を円滑に進めるには、イランとの対立を避けなければならないという事情がカタールにはあるのだ。また、ムスリム同胞団は多くの国から非難されているが、貧困家庭などへの支援や社会奉仕活動に取り組むという一面もあるため擁護すると主張したのだとみられる。

しかし、カタールとの国交を断絶することを発表した国々は、イランと対立し、また、原理主義であるムスリム同胞団を危害を加える団体としてとらえているため、このタミム首相の演説の中で言われた内容に危機感を感じたのだとされる。特にサウジアラビアは、内戦が続くシリアやイエメンをめぐってイランと鋭く対立し、去年1月には断交に踏み切った事情がありであり、また、エジプトは、首相を2人も暗殺してきたムスリム同胞団をテロ組織に認定し、警戒している。ムスリム同胞団とは、宗教活動に、政治活動、社会福祉活動を取り入れたイスラム教スンニ派のISに似た団体であり、エジプトに根を張っている。

このような理由がカタールとの国交を断絶させたが、実際に住んでいる人同士には異なる事情があり、カタール断絶を良いこととしては捉えられないことが多々ある。まず、国交を断絶したために、各国はカタール航空の乗り入れを禁止し、カタールと唯一陸路で接するサウジアラビアは国境を封鎖した。さらに、湾岸諸国は自国内のカタール人に対し14日以内の出国を命じると同時に、カタールにいる自国民に帰国を要請した。一見それほど難しそうではない事情に見えるが、家族がいる人にとっては、なんとも難しい決断だ。これまで湾岸諸国のうち6カ国間では、どこにでも居住、勤務、渡航する自由が認められていたために国籍の違う人同時での結婚が多かったのだ。カタール断交によって、家族がバラバラになってしまう恐れがあり、また、とどまることを決意すると、「無国籍」状態になる恐れもある。このように、カタール断交は国としての安全は保つかもしれないが、非人道的なことが起こる可能性もある。

確かに、サウジアラビアやエジプト、バーレーン、アラブ首長国連邦がカタールのタミム首相が言ったことに不安を抱くのは分かる。イランとの関係の他にも、カタールは湾岸諸国の文化を変えるような動き、例えば、女性が自由に運転できることなども見せてきた。しかし、本当に国交を断絶をしなくてはならないのかと疑問にも思う。カタールの首相は、演説の中で言ったことのないことが流れていると主張しているが、サウジアラビアやエジプトなどの国は聞く耳を持たない。国交を断絶することを決めた理由と言われたこと以外にもっと具体的な理由があるのではないかと思う。カタールがイランとの経済的関係を深めることによって、ともに豊富な資金を得ていたことに、イランと断交してしまったサウジアラビアが苛立っていたのは明らかだ。今年の5月にあった中東訪問で、トランプ氏がカタールとの断交へサウジアラビアの背中を押していたのかもしれない。けれども、カタールは他の湾岸諸国に危害を与えるようなことはしていない。そのため、国交を断絶することにより損をすることの方がサウジアラビアなどの国にはあるかもしれない。仲介役に入っているクウェートが言っていることは確かで、ISと戦うために中東が団結しなければならないときにカタール断交は不適切な動きだと思う。米国が主導するISへの空爆へもカタールの米軍基地内に司令センターが置かれているのだ。また、中東湾岸諸国に国籍を持つ人たちにとっても、あまりにも酷い決断が必要とされている。家族と別れなくてはいけないというのはいくら国同士の仲が悪くなったからと言って、するべきことではないと思う。カタールにとってはこういったこと以外にも心配しなければならないことがある。それは、食料品や生活必需品などの輸入だ。今まで、近くの湾岸諸国から輸入していたのが国交の断絶により、それが不可能となったのだ。いくら一人当たりのGDPが非常に高い国であっても代わりの調達先を見つけるのは困難だ。何しろ、陸続きの国はサウジアラビアしかないのだ。空路や海路だと費用がかかりすぎる。トルコ大統領が言うように、国を孤立させることは非人道的であり、また、イスラムの価値観にも反する。このようにカタール断交は国民にまで困難をもたらしている。トルコやクウェートなどの仲介役がどうにか湾岸諸国を和解してくれることが、一番理想的であると思う。

東樹先生 講評

中東の複雑な国際情勢を背景にしたカタール断交のニュースについて、 カタールと周辺諸国双方の事情を考慮した上で、解決策の提案ができています。 解説も分かりやすく、深く理解できていることが分かります。 解決の糸口が見えにくい問題ですが、このように解決を目指して考えていきたいですね。